平成29年4月 海徳寺 寺報

本尊問答抄

嘘をつけば閻魔様が・・・

僻事とは、道理や事実を曲げる過ちのことです。一人の過ちは、池に石を落とした波紋のように、本人に止まらず周囲に影響していきます。波が波を呼んで大きくなることもありますから、注意しなければいけません。  善もまた同じように、本人に止まらず周囲に広がります。どんなに小さな善であっても、それを積み重ねようとしている努力が、周囲を和ませ、人を育て、やがて安穏な社会を開いていくのです。

出典:日蓮宗新聞社発行『今月の聖語』

このところの報道をみると、「豊洲市場」や「森友学園」に関する報道が連日なされています。豊洲市場では、石原慎太郎元東京都知事をはじめとする関係者が、百条委員会の場で証言するという姿が映し出されていました。一方、森友学園の問題では、国会での証人喚問が行われ、理事長がこれまでの経緯を答弁しておりました。いずれも虚偽の答弁をすると偽証罪に問われるということですので、発言の一言一言に注目が集まっております。

そのような一連の報道を見聞きしつつ、日蓮聖人の言葉を探したのが今月の御遺文です。真実は一つですので、誰かが本当のことを言って、誰かが嘘の発言をしていることとなります。これまでの報道を見ると、一つの嘘がどんどんと大きくなり、巻き込まれる人も増え、今回の問題へと発展している気がいたします。

人の悪口やトラブル等、あまり良くない話は尾ひれがつき事実よりも膨らんでいく傾向にあります。まさに今回の報道はその典型的な事例ではないでしょうか。「嘘を付けば閻魔様に舌を抜かれるから、嘘をついては駄目だよ」と昔母親に言われたことがありました。遠い昔のことで忘れかけていましたが、今回の報道をきっかけに、絵本で見た閻魔様に恐れ慄いたあの日のことを思い出しました。そして、毎月の祈願祭で読誦する『懺悔文』の「或いは悪口・両舌・妄語・綺語をもてあそび」という一節の言葉の重みを噛み締めております。

(海徳寺住職・加藤智章)

平成29年4月 海徳寺 寺報