平成30年10月 海徳寺 寺報

仏教と数字

仏陀が悟られた内容をそのまま語られたのが法華経です。その文字の総数が六万九千三百八十四であり、この一文字ずつが仏陀そのものです。

これは私たちの身体を構成している細胞と似ています。それぞれの細胞に遺伝子が組み込まれているように、法華経の一文字には悟りの全てが内包されています。ですから法華経の一文字は、それぞれが大慈悲の分身なのであり、このように受け止めることで、仏陀と同じ心になれるのです。

出典:日蓮宗新聞社発行『今月の聖語』

先日の彼岸会法要の際に、お彼岸は六波羅蜜(布施・持戒・忍辱・精進・禅定・智慧)という仏道修行を行う期間であるというお話をしました。そして、仏教には数字に関係する言葉が沢山あるということにも触れました。

その一つの例として、「笠地蔵」の話を紹介いたしました。貧しくも心の清い老夫婦が、道端のお地蔵さんに笠を被せてやり、その恩返しを受けるというものです。道端の地蔵は六道(地獄・畜生・餓鬼・修羅・人・天)に因み六体。しかし、売り物の笠は五つしかなく、自身が被っていた笠をお地蔵さんに被せてあげるという話です。

また、別の例として四苦八苦にも言及いたしました。お釈迦様は、人間の避けることができない苦悩を四苦八苦として説かれております。生・老・病・死の根源的な四つの苦しみ、さらに、愛別離苦・怨憎会苦・求不得苦・五蘊盛苦の四つを加えると八苦となります。煩悩の数が一〇八であるのも、四×九=三十六、八×九=七十二、両者の合計が一〇八となるからです。

毎月の祈願祭にて「一部八巻二十八品六万九千三百八十四・・・」という経文を唱えておりますが、それは法華経の一文字一文字が仏陀そのものであると考えるからです。この例も、数字に関わる一つのエピソードと思い、今月の聖語として取り上げました。

(海徳寺住職・加藤智章)

平成30年10月 海徳寺 寺報