平成30年11月 海徳寺 寺報

真実の善知識

ここで示す善知識とは、善良なる縁やきっかけのことです。それは人であったり、書物であったり、映像であったりします。

「朱に交われば赤くなる」といわれるように私たちは周囲の影響を強く受けながら生きています。恐ろしいのは全体が一色になり個々の色が分からなくなり、社会が崩壊してしまうことです。それだけに善知識との出会いは大切です。善知識から得た正しい感性や価値観は個々の人生を豊かにすると同時に、社会全体を美しいものにし、安穏なる姿に導いてくれるのです。

出典:日蓮宗新聞社発行『今月の聖語』

先月の十九・二十日にかけて、鴨川市にある大本山清澄寺にて開催された檀信徒研修道場に本多上人とともに参加いたしました。

この檀信徒研修道場とは、檀家さんを対象とする一泊二日の修行です。立教開宗の聖地・清澄寺にて、日蓮聖人に関する様々な講義を受け、唱題行や書写行等、さらに朝五時過ぎに日蓮聖人がお題目を初めてお唱えした旭が森へと参拝しました。登りくる朝日に向かってお題目をお唱えすると、立教開宗往時の日蓮聖人の姿に思いを馳せ、宗祖の御心に少しでも近づけたような気がいたしました。

ところで、この道場に参加してふと思い出したことがあります。それは、自身が小学生の時に清澄寺に祀られている虚空蔵菩薩に願掛けをして以降、急に学業の成績が向上したことです。虚空蔵菩薩とは智慧と福徳を人々に授ける菩薩とされ、日蓮聖人も幼少の時より「日本第一の智者となし給え」という願をかけられておられました。

そのようなことを思い出しつつ、ふと清澄寺の境内を見渡すと、見たことがある字体の石碑が。それは、祖父が書いた日蓮聖人の師匠・道善房墓所入口の石碑でした。以前より祖父が書いた字が清澄寺にも残されていることは聞いていましたが、今回初めてその書を目にいたしました。  善良なる縁である

(海徳寺住職・加藤智章)

平成30年11月 海徳寺 寺報