一をもって萬を察せよ

狭い視野に留まり広く世間を知ろうとしないのを「井の中の蛙大海を知らず」と言います。しかしこれにはこう続ける人もいます。「されど空の蒼さを知る」。たとえ世界が狭くとも一つの事柄を突き詰めていくことでその世界の深さや広がりを知ることができるというのです。

現代は情報が氾濫しています。それをキャッチすることも大切ですが、追いかけることに気を取られ本質を見極める目が曇ってはいないでしょうか。「一」を侮ってはいけません。

出典:日蓮宗新聞社発行『今月の聖語』

去る十一月二十三日に、宗祖日蓮大聖人第七百三十八遠忌御会式法要と、元巨人軍の堀内恒夫さんの講演会が行われました。

往年の大エースの堀内さんであっても、王さん・長嶋さんの存在は別格だそうです。それは給料が端的に表わし、王さん・長嶋さんの二人で選手の給料全体の半分を占め、全体の半分を残りの選手で分配する構造に。そのため、堀内さんが二十勝近くしているのにも関わらず、前年よりも勝ち星が減っていたからという理由で、年俸もダウンしたという話がありました。また、長嶋さんが堀内さんのお子さんの名付け親にも関わらず、そのお子さんに「名前は何?」と質問する等、長嶋さんならではのエピソードもありました。

そのなかで私自身特に印象に残っていた話が、プロ野球は華やかな世界に見えても、実際には弱肉強食の世界で、いつクビになるかわからない残酷な世界だと。プロ野球選手になっても、生涯野球で生活できる人は皆無に等しく、引退した今でも野球に携わることができる自分はとても幸せだとおっしゃっておりました。

そんなプロの世界を生き延びてきた堀内さんから、講演会後の会食にて「お上人」と何度か呼ばれました。その度に、内心では大変恐縮していました。しかし、誰から「お上人」と呼ばれても、その呼称に見合う行動をしていれば、何ら恐縮する必要はありません。今回の講演会にて、人の上に立つ「プロの僧侶」を目指さなければ、そのような思いを新たにいたしました。

(海徳寺住職・加藤智章)

令和元年12月 海徳寺 寺報

報恩道語表紙(令和元年12月号)1
報恩道語裏面(令和元年12月号)2