令和元年5月 海徳寺 寺報

経文と仏陀

仏陀が悟られた内容をそのまま語られたのが法華経です。その文字の総数が六万九千三百八十四であり、この一文字ずつが仏陀そのものです。

これは私たちの身体を構成している細胞と似ています。それぞれの細胞に遺伝子が組み込まれているように、法華経の一文字には悟りの全てが内包されています。ですから法華経の一文字は、それぞれが大慈悲の分身なのであり、このように受け止めることで、仏陀と同じ心になれるのです。

出典:日蓮宗新聞社発行『今月の聖語』

「平成」という時代が終わり、新たに「令和」の時代が幕開けいたしました。先月の発表時には違和感があった新元号の名称も、ひと月も経過すればだいぶ馴染んできた気がいたします。

今回の元号が、「万葉集」に拠り所とするという話しを耳にして、ふと疑問に思った点があります。それは、「妙法蓮華経」という経典の中に、「令」「和」の文字がどれだけ登場するのかということでした。

法華経の文字は、総数で六万九千三百八十四あります。調べてみると、そのうち「令」が一七六文字、「和」が一五文字でした。「令」の文字が圧倒的に多く、「和」という文字があまり登場していないという結果となりました。これは、自身にとってはとても意外な結果でした。なぜなら、「柔和」、「和合」、「和顔」等、「和」を組み合わせた言葉はすぐに浮かぶのに対し、「令」についてはすぐにには思い浮かばなかったからです。

そこで、「令」に着目し、お経の一文字一文字に目を凝らしながら読み進めてみると、確かに何度も登場しています。毎日読んでいる自我偈の中にも五回登場いたします。

令和という時代を迎えるにあたり、そのようなことを調べてみて、まだまだ気がついていないことが沢山あることを実感いたしました。法華経の一文字一文字がお釈迦様であるという日蓮聖人の御遺文の言葉を深くかみしめ、新たな時代が安穏なる時代となることを御祈念申し上げます。

(海徳寺住職・加藤智章)

令和元年5月 海徳寺 寺報

令和2年5月海徳寺寺報
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