令和2年8月 海徳寺 寺報

令和2年8月海徳寺寺報

宗教と生活

法華経以前の諸経は、世間の法を仏法と関係づけておしえているのであるが、法華経はそうではない。法華経では世間の法がそのまま仏法の全体であると解釈し認定するのである。爾前経は世間の現象を対立的相対的に見て、現象のあれこれを仏法と引き合わせて解釈するが、法華経は、端的・直截に世法即仏法と説くのである。

だから心が万法(すべてのもの)を生む大地で生ずる草木は万法というが、そうではなく、心即大地・大地即草木と見る。つまり対立の調和ではなく融合一体。すなわち宗教と生活の一枚化の原理の説示である。

出典:日蓮宗新聞社発行『今月の聖語』

東日本大震災の際に、日本に二百億円以上の大金を寄付されて下さった台湾という地区がありました。その寄付に対する台湾人の想いは、可哀そうとか同情を誘う寄付ばかりではなく、恩返しという想いが詰まって集まった寄付といえるでしょう。

時は、千九百二十年、台湾南部の嘉南平野に当時最大規模のダム「烏山頭(うさんとう)ダム」を造ることとなります。もともと灌漑設備が施されていない大きな平野で作物がほとんど収穫出来ない平野でありましたが、八田與一氏はこの平野を穀倉地帯にすべく「嘉南平野計画書」を作り上げ、その工事には、当時の台湾の国家予算の三分の一以上に及び、八田氏は政府や農民などに援助要請し、なんとか予算を工面し工事に着手しました。八田氏は、台湾人作業員に機械の使い方を熱心に教えたり、彼らと寝食を共にしたりと地元・台湾の作業員を大切にされていました。
八田氏と苦楽・寝食を共にし、造り上げてきたこのダムによって、不毛の地であった平野も緑豊かな田園地帯へと変化し、台湾自体も潤うようになったのであります。
その一世紀前の先師の志の賜物が、東日本大震災の時の恩返しとなって花開いた訳であります。

私たちは自分一人で自分の幸せを手にしたものと勘違いしがちでありますが、誰もが、先師(先祖)が築きあげてきた土台の上で生活をしているのです、今ある幸せを先祖に感謝し、更なる幸せを後世への贈り物として、法華経の教えを信じ心を耕し生きて行きたいものであります。

(海徳寺山務員・本多経宏)

令和2年8月 海徳寺 寺報

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