令和元年11月 海徳寺 寺報

病も仏の慈悲心

「苦しい時の神頼み」とよくいいます。人間はそれほど強い生き物ではありません。日頃手を合わさない人でも病気になったり大きな困難に遭遇した時、神仏にすがりたくなります。これは自然の情ともいえるでしょう。

人智を超えた大いなる存在に頭を垂れ祈りを捧げる。ここに信仰との出会いがあるのではないでしょうか。

そう受け取るなら苦しみも神仏の慈悲の現れといえるかもしれません。ただ大切なのは「喉元過ぎれば熱さを忘れる」重々用心しなければならない凡夫の性です。

出典:日蓮宗新聞社発行『今月の聖語』

台風十五号に続き、台風十九号が関東を直撃し、甚大なる被害が発生いたしました。幸いなことに当山への被害はほとんどありませんでしたが、全国各地で数多くの犠牲者を出し、改めて自然への畏怖の念を強く抱きました。


今回の台風直撃でふと思い出したことが、香港で行われているデモのスローガン「水のようになれ(Be Water)」です。香港では「逃亡犯条例」の改正に反対するデモがすでに数ヶ月も続き、一部が暴徒化して怪我人が出る等、緊迫した事態が続いています。そのデモのスローガンとして掲げられているのが、この「水のようになれ」です。一滴の水、それ自体には大した力はないですが、水が集まって川となれば、とてつもないエネルギーとなり、巨大なものを破壊してしまいます。まさに今回の台風は、その水が持つ計り知れない力を如実に表していました。


さて、この「水のようになれ」という言葉は、ブルース・リーの名言からきているそうです。ブルース・リーといえば、「考えるな。感じろ(Don’t think. Just feel.)」が有名ですが、この「水のようになれ」という言葉もとても含蓄があるもので、色々と考えさせられます。


このように寺報を作成している現在も、また台風が近づいているとのニュースが。これだけ台風が多いと、気候変動について一刻も早く「Just think」すべき時期なのかもしれません。

(海徳寺住職・加藤智章)

令和元年11月 海徳寺 寺報