令和2年1月 海徳寺 寺報

真実の財産

真実の財産は、金銀宝石でもなく、土地や建物でもありません。まして数字で表現できるものではありません。それは、心に蓄積されるものです。この財は生きる力の根源的なものです。

経済優先の現代社会の不安は、本当に大切にしなければならないものを失いつつあることからくるかもしれません。

心に財を積めば、それは内より出て身を飾り、人生をより輝かせ、やがて安穏な社会へと進む力となるのです。

出典:日蓮宗新聞社発行『今月の聖語』

先月、脳科学者・茂木健一郎さんの「現代における幸福とは?」という題名での講演会に参加いたしました。

その講演のなかで、我々を取り巻く環境は時代とともに大きく変化し、現在ではAIやロボットの登場によって、物の価値が大きく変わったという話がありました。

かつて音楽を作るには多くの楽器やスタッフ、費用がかかりました。しかし、今ではスマートフォン一つあれば簡単に音楽を生み出すことができ、さらにすぐに世界に発信することができる世の中になりました。今では有名となった米津玄師さんは、まさにこの時代の象徴だと。  講演の最後に、「あなたにとっての幸福とは何ですか?」という本題を議論いたしました。かつてはお金に象徴されるように物質的な豊かさが幸福の尺度として重要視されてきましたが、現在では幸福の尺度も人それぞれで大きく変化しています。

そして、自分にとっての幸福とは何かを自問自答した時に、ふと頭に浮かんだことが、家族全員が狭い布団にて寝ている今の状況です。朝起きた時には、誰一人として同じ位置で寝てはいませんが、家族全員が同じ空間を共有している今の時間をとても幸せに感じます。あと数年もすれば子供達も大きくなり、今のように同じ布団にて寝ることはなくなるでしょう。それがわかっているからこそ幸せだと思うのかもしれません。令和二年の新年を迎え、本年が皆様にとって幸せになることをご祈念申し上げます。

(海徳寺住職・加藤智章)

令和2年1月 海徳寺 寺報

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