令和4年12月 海徳寺 寺報

立正安国論

仏を真似る

蒼蠅とは青バエのこと。驥尾とは一日に千里を走る駿馬の尾のことです。小さな羽虫でも良馬の尻尾につかまっていれば、考えられないような距離を進むことができます。つまりどんな人でも、進むべき道を示してくれる師匠が立派なら、自ずとその域に近づいて行けるということです。

哲学者の森信三氏は、「人はすべからく、終生の師をもつべし。真に卓越せる師をもつ人は、終生道を求めて歩きつづける。その状あたかも、北斗星を望んで航行する船の如し」と、人生の道筋を示してくれる良き師との巡り会いを重視しています。

良き師とは、人だけではありません。自分自身が見聞きするものすべてです。それらに生涯教えを請うことで、知らず知らずのうちに、人生が豊かになっていくことでしょう。

出典:日蓮宗ポータルサイト『今月の聖語』 2022年11月号

気がつけばもう師走です。あっという間に今年一年が過ぎたなと思うとともに、このところは十一月頃から届く喪中はがきが気になるようになりました。

今から二年前のことです。大学時代の恩師がお亡くなりになったという訃報を喪中はがきにて知りました。先生が亡くなったのが令和二年の三月。丁度コロナに伴う緊急事態宣言が出された頃でした。ここ数年は年賀状のみのやりとりでしたが、自身の結婚式に挨拶をお願いするような間柄でした。突然の知らせにただただ驚くばかりでした。

コロナが蔓延してからは近親者のみでの葬儀が多く、当時は移動もままならない状況でした。きっと先生も家族葬だったのだろうと考え、この状況が落ち着いた頃に兵庫にある先生のお墓参りに行きたいなと考えていました。

しかし、二年経過した今もお墓に行くことができず、何かモヤモヤした気持ちがずっと心の中にありました。

そんな時に日蓮宗宗務院(本部)から毎月送られてる広報誌の中に、一枚の講演会の案内が。タイトルは「量子論から科学する 見えない心の世界」。難解なタイトルに自分には関係ないと思い破棄しようとした瞬間、目に飛び込んだのが「京都大学名誉教授岸根卓郎先生」。どこかで聞いたことがあるお名前だと思い経歴を確認すると、岸根先生は自身の研究室の元教授で、先日亡くなった恩師が学生だった時の指導教授でした。九十五歳という年齢で講演会をしていることにも驚きましたが、元来の研究分野から離れ、「心の世界」という目に見えないのものを研究していることにも驚きました。そして、この案内を目にしたのも何かの縁だと感じ、これから先生の墓参りと京都での講演会に行ってきます。

海徳寺住職:加藤智章

令和4年12月 海徳寺 寺報

報恩道語表紙(令和04年12月号)
報恩道語表紙(令和04年12月号)
報恩道語表紙(令和04年12月号)
報恩道語表紙(令和04年12月号)