平成29年5月 海徳寺 寺報

日蓮聖人御遺文

『働きアリ』は本当に働き者?

 『種々御振舞御書』は、日蓮聖人の四つの手紙を先師が一つにまとめたといわれています。蒙古襲来の気配の中『立正安国論』での諫めを用いない幕府などの有り様を糾し、さらにご自身の度重なる法難の様子を述べ、最後に身延での生活の様子を語られています。この一節は方人、つまり味方よりもむしろ自分を迫害する強敵こそが信仰を育ててくれる恩人であると説かれています。いかなる苦しみにも屈するなと励まして下さっているのです。

出典:日蓮宗新聞社発行『今月の聖語』

数年前に『働かないアリに意義がある』という本が話題になりました。アリとキリギリスの寓話を一例として、アリは働き者というイメージがあります。しかし、実際に働き者なのは2、3割に過ぎず、残りのアリは働いていないという意外な話でした。さらに意外であったのは、働き者のアリだけを集めると、その中の7割が働かなくなってしまい、逆に働かないアリだけを集めると、2、3割のアリが働き者へと変化するそうです。

そのようなアリの生態を聞いて、ふと僧侶である自身に当てはめてみました。僧侶にも色々な方がおられます。信仰熱心な方もいれば、残念ながら信仰心があるのかなと疑ってしまうような方もおられます。信仰の程度を計測することはできませんので、僧侶全体の何割が信仰心を持ち、何割がそうではないのか、この働きアリの事例のように区分することはできませんが、自身は細々とであっても常に信心を持ち続けたいと考えております。

その信心を試されるのが『懈怠心』という強敵です。前日飲みすぎて起きるのが辛く、朝勤をサボりたいなと思う時もございます。相田みつおさんの『(だって)にんげんだもの』という言葉を自身に投げかけ、かつてサボったこともありました。懈怠心という見えない敵が生じた時にこそ、自分自身の信仰が試されている気がいたします。

(海徳寺住職・加藤智章)

平成29年5月 海徳寺 寺報