平成27年10月 報恩道語(海徳寺寺報)

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鏡に映る自分

普段何気なく使っている鏡は、時として自分自身を客観的に見つめる道具にもなります。鏡に映ったその姿に対して、自身の行動や考えが正しいのかどうかを自問自答することもあるのではないでしょうか。

今月の言葉として日蓮聖人御遺文『開目抄』のこの一節を引用したのには、自分自身を叱ってくれたおばあさんがお亡くなりになったことがきっかけとなります。

数年前のことです。お寺の行事が始まる一時間程前に、本堂の窓ガラスが汚れていることに気づき、慌てて窓拭きをしていると、そのおばあさんが早めにお寺に来られました。そこで一言。

「なんで今頃窓拭きしているんだい。今日お客さんが大勢来るのがわかっているのだから、窓拭きなんてとっくの昔に終えていて当然だろう。」

仏様にお給仕することが僧侶の仕事であり、その基本はお寺を清淨にすることにあります。特に行事の時には大勢の方がお参りに来られますので、普段以上に綺麗にしなければという思いがあります。しかし、この時は窓拭きをするのを後回しにしてしまい、このおばあさんからのお叱りの言葉を頂きました。それ以来、早めに掃除を行うように心掛け、そして、窓拭きをする度にこの時の出来事を思い出します。

年齢を重ね又親となり、叱られるよりも叱る機会が増えつつあります。そのような中、最近では叱られることも有り難いと思うようになりました。その一方で、どのように叱れば自分の意図が伝わるのか、叱ることの難しさを感じております。残念ながら今年の八月にこのおばあさんはお亡くなりになり、その方から叱られることはもう二度とありませんが、鏡ならぬ窓ガラスの掃除をする度に、ふとそのおばあさんを思い出し、日々の行動を省みます。

海徳寺第7世 加藤智章

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