3つの親孝行

日蓮聖人御遺文『十王讃歎抄』

孝養に三種あり。衣食を施すを下品とし、父母の意に違わざるを中品とし、功徳を回向するを上品とす。存生の父母だに尚功徳を回向するを上品とす、況や亡き親に於てをや。

今月の御遺文は、とある檀家さんと法要の打合せをしている際に自身の頭にふとよぎったものです。

そのご家族は、昨年お父様がお亡くなりになり、葬儀に際して戒名としてどうしても「居士」をつけてほしいと懇願されました。「居士」や「大姉」という位号はこれまでのお寺との繋がり、例えば、総代・世話人等お寺に対して篤信の方や、会社・地域等の社会的にみても大いに貢献された方のみに限定して授与しております。その為、申し訳ないがお寺として「居士」号をお付けすることはできませんと断り、「信士」の位号を授与いたしました。葬儀の式中にお戒名のご説明をしたところ、お父さんの人柄が反映されているとても良い戒名だと皆納得されておられました。

しかし、今回の一周忌法要を前に、娘さんの一人から、今から戒名を「居士」にしてもらえることはできないかというお願いがございました。理由をお聞きいたしますと、その娘さんはお父さんがご健在の時に色々と迷惑をかけてばかりだったと。生前親孝行できなかったからこそ、戒名の位を上げることで親孝行したいという気持ちが再び強くなったそうです。そのお気持ちは強く伝わったのですが、実際には今回も娘さんの依頼をお断りいたしました。そして、一周忌法要の法話にてこちらの御遺文をご紹介いたしました。

衣食を施すことは親孝行の第一歩。親の意見に素直に従い、心配をかけないことが次なる孝行。最も親孝行なのは、功徳(善い結果を目指す精進努力)を回向すること、すなわち善い行いを自身の為ではなく他の人に差し向けること。もしも、お父様がご存命であれば、善い行いをしてお父さんの喜ぶ顔を見ることができます。しかし、亡くなってしまっては、その反応を知ることはできません。だからこそ、亡き人の為に回向を継続することは難しいといえます。

つい先日、私自身も母親の一周忌を迎えました。残念ながら亡くなった母に直接親孝行することはできません。ですがこの御遺文に従い、朝勤の最後に必ず母親の回向をしております。今月は春のお彼岸を迎えます。是非ともお墓参りをしていただき、ご先祖様に孝行されてはいかがでしょうか。

              (海徳寺住職・加藤智章)

平成28年3月報恩道語

thumbnail of 報恩道語内側(平成28年3月号 )