令和4年6月 海徳寺 寺報

本尊問答抄

宗祖ご降誕によせて

「この紋所が目に入らぬか。ここにおわすをどなたと心得る」。ご存知水戸黄門の決め台詞です。その黄門さまは日蓮宗に縁が深く、母の菩提を弔うために水戸に久昌寺を建てられました。

ところで黄門さまご自身のお誕生日にこんな逸話があります。家臣が祝いの日として豪勢な膳を用意したところそれを止め、白粥と梅干し一つにされました。その理由を「せめて今日一日を粗食とせしは、母上が我れを産みし折の苦しみを終生忘れぬためである」と語ったというこです。

誕生日は祝福されるだけの日ではなく、両親をはじめ周囲の人びとへの報恩の日でもあることを忘れてはならないのです。

出典:日蓮宗ポータルサイト『今月の聖語』 2021年2月号

私ごとですが、先日誕生日を迎えました。この年になると「今年何歳だっけ?」と自分の年齢がおぼろげになっております。お祝いの言葉はもちろん嬉しいのですが、母親が亡くなってからは、誕生日は母親がお腹を痛めてくれた日だなと思うようになりました。そして、ふと「自分の誕生日に何をしたら母親は喜んでくれるだろうか?」と。

母親はとても信仰熱心な人でした。もともとは一般家庭の生まれですが、寺に嫁いだ後、子育てが一段落してからは頭を剃髪して仏門に。そんな信仰熱心な母親でしたので、「身延山に行って母親の回向してもらえばきっと喜んでくれるだろう」と思うようになりました。

そこで、今年の誕生日は日蓮宗の総本山である身延山久遠寺にお参りに行きました。日蓮聖人のお墓である御廟所に行くと、一生懸命お題目を唱えている修行僧の姿が。ちょうどこの時期は、「信行道場」と呼ばれる日蓮宗の修行期間中でした。

今から八十年近く前に開設されたこの信行道場は、祖父が初期の指導者でした。そして、今回の信行道場では、自身の兄弟子や当山の山田上人が修行僧の指導にあたっていました。遠くからお二人の姿を拝しながら、祖父や母親をはじめ、これまでお世話になっていた様々な方への報恩感謝の念を新たにした今年の誕生日でした。

海徳寺住職 加藤智章

令和4年6月 海徳寺 寺報

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