平成28年4月 海徳寺 寺報

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濡れ衣を着せる

日蓮聖人御遺文『波木井殿御書』

此の法華経は三途の河にては船となり、死出の山にては大白牛車となり、冥途にては燈となり、霊山に参る橋なり

今月の御遺文は、三月二十日に海徳寺で行われた春季彼岸会法要でご紹介した御遺文です。

本年は三月二十日が春分の日で、その前後三日間を加えた一週間が彼岸の期間となります。当山においても、彼岸の中日に檀信徒の方々とともに一緒にお経を読誦いたしました。お彼岸の恒例行事として、家族揃ってお墓参りに行かれる方も多いのではないでしょうか。

「彼岸」とは仏様の悟りの世界であります。一方、苦しみ・悲しみなどの迷いが多い我々が住むこの世界が「此岸」です。此岸と彼岸の間に流れている河が、「三途の河」であり、人は亡くなると三途の河を渡るといわれております。
「三途」と書くように、河を渡る方法には三通りあります。生前良い行いをした方は橋を渡ることができます。罪の軽い方は浅瀬を渡り、悪人は深い急な流れを渡らなければなりません。三途の河を渡りきると、奪衣婆(だつえば)という鬼が皆の服を脱がし、懸衣翁(けんえおう)という鬼がその服を木に懸けます。服が濡れていると枝が大きくしなり、乾いていればしならない。そのしなり具合によって生前の行いを判断し、後に登場する閻魔法王の裁きの資料となります。

なかには、自分の濡れた服を善人に着せ知らん顔をする人もいて、他人に無実の罪をきせる「濡れ衣を着せる」という言葉は、この仏教故事に由来いたします。

上記の御遺文は、葬儀で引導を渡す時に必ずお読みしております。法華経を信じさえすれば、法華経が三途の河では舟となって我々を濡れずに彼岸まで渡してくれる。日蓮聖人のこのお言葉を信じ、今月もご一緒にお題目をお唱えいたしましょう 。

              (海徳寺住職・加藤智章)

平成28年4月報恩道語

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