逝き方は生き方から
「今までは人のことだと思ふたに 俺が死ぬとはこいつはたまらん」。江戸時代の狂歌師大田南畝の辞世の句です。
見方によって私たちはこの世に生まれ出た瞬間から死に向かって歩み始めているとも言えるでしょう。これを「諸行無常」と表現しています。しかし、日頃この事実をどこまで実感しているでしょうか。
自分の息が止まる瞬間をイメージして今を生きる。これはとても想像し難いことかも知れません。ですが、そこから地に足が着いた生き方が見えて来るのかも知れません。
出典:日蓮宗新聞社発行『今月の聖語』
新年あけましておめどうございます。旧年中は大変お世話になりました。本年も何卒よろしくお願いいたします。
さて、このところ恒例となりましたその年の世相を表す漢字一文字として、平成最後の昨年は「災」という漢字が選ばれました。昨年は、大阪北部地震、西日本豪雨、記録的猛暑、北海道胆嚢振東部地震、台風二十一号・二十四号の直撃等、思い起こせば様々な自然災害が多発した一年でありました。
インフラの整備が進み、かつて恐れいていた自然災害による被害が少なくなっており、普段の生活において、自然に対する畏怖の念が希薄になりつつあります。昨年の数々の自然災害は、自然の脅威を再認識するとともに、普段何事もなく平穏無事に過ごせていることの有難さが身に染みるようになりました。
そのような時に、『死ぬこと以外かすり傷』というとてもキャッチーな本がベストセラーになっていることを知りました。日常生活では決していいことばかりが起きるわけではありません。昨年一年を思い出してみて下さい。程度の差はあれ、誰もが大なり小なり辛いことがあったはずです。この本のタイトルを知り、とても前向きになる良い言葉であると思いました。
「災い転じて福となす」。本年が皆様にとってより良い一年となることを心よりご祈念申し上げます。
(海徳寺住職・加藤智章)