令和元年6月 海徳寺 寺報

窪尼御前御返事

根を養え

いよいよ「令和」の始まりです。この元号に込められた思いとは、梅が花開きふくよかな香りを放つことができるのも、冬の厳しさを経験しているがゆえ。人も厳しき経験を通して他を思い、美しく心を寄せ合う時代になることを願って選定されたといわれています。

ところで、私たちはつい花に目がいきがちです。しかし花を咲かせる大本は根っこにあるはずです。しっかりと根を養う心がけが第一ではないでしょうか。こんな言葉があります。 「何も咲かない寒い日は下へ下へと根を伸ばせ。やがて大きな花が咲く」

出典:日蓮宗新聞社発行『今月の聖語』

先月一日に、元号が新しくなって初めて海徳寺月例祈願祭を行いました。ゴールデンウィークの最中の休日にも関わらず、八人の僧侶の方にご出仕頂きました。加えて、小さな僧侶の卵達も三人お手伝い頂き、痺れる足を我慢しながら仏様へのご給仕をいたしました。

お経を読みながら、ふと四月に開催された霊断師会身延大会での日蓮宗宗務総長・中川法政猊下のお言葉が頭によぎりました。その言葉は、平成という時代は昭和を生きてきた人間達が作り、令和という時代は平成の時代を生きてきた人達が築きあげるものだというものでした。

現在、海徳寺のお寺を預かっている自身としては、その言葉がとても胸に響きました。なぜなら、現在行っている海徳寺での様々な取り組みは、すぐには目に見える形では現れないかもしれません。しかし、今の取り組みは、二十年、三十年経った後にきっと目に見える形になっているだろうというように解釈したからです。

令和になってまだ間もないこの時期ではありますが、いつかまた元号が変わります。次の元号を迎える時代になった時に、これまでと変わらず、この海徳寺というお寺が地域に密着したものであり、多くの方々の信仰の拠り所となる道場となったままであることを願いつつ、令和最初の祈願祭を行いました。

(海徳寺住職・加藤智章)

令和元年6月 海徳寺 寺報