令和2年2月 海徳寺 寺報

この生を空しうすることなかれ

充実した人生

人生を空虚なものにしないためには、正しさに対して、素直に真面目に真剣に取り組むことです。

そうすれば、自己中心的な考えから逃れられ、他者に慈しみの心で接することができ、自他ともに安穏になります。

それは、蓮の花が泥から養分を摂取しながら、泥に染まることなく成長し、やがて空中に美しい花を咲かせ、見る者をして和ませる姿に似ています。

蓮の花のようになりたいとの祈りが、人生を充実させるのです。

出典:日蓮宗新聞社発行『今月の聖語』

昨年末、作家の東野圭吾さんがとある賞の表彰を受けました。その時の受賞挨拶が大変印象に残り、下記に引用いたします。

「ここにいる皆さんの明日からの人生の中で、一番若いのは今日です。僕もまた来年、一つ年を取りますが、今日が一番、若いんだから、今日が一番、これからの人生で可能性がある」。

小学生の頃、野球少年だった私は、PL学園のKKコンビ等、甲子園で活躍している高校球児の姿を見て、とても大人な印象を持っていました。しかし、自身が高校球児となった時を振り返ってみると、高校生はまだまだ子供で、かつて思い描いていた高校球児がなんであんなに大人に見えていたのだろうと思っていました。

さらに自身が高校生になった当時には、三〇歳や四〇歳の人は、悪く言えば「オジサン」だと思っていました。人生経験も積み、立派な大人として振る舞っている、そんな印象を持っていました。しかし、自身がもうすぐ四五歳を迎えるにあたって、体型は立派なオジサンとなったものの、肝心の中身はどうかといえば、やはり思い描いていた理想像とはかけ離れているというのが実情です。

このように考えてみると、先述の東野圭吾さんの言葉はとても 含蓄がある言葉となります。今日という日が一番人生で可能性がある日です。だからこそ、空しく生きるのではなく、充実した一日にしたいものです。            

(海徳寺住職・加藤智章)

令和2年2月 海徳寺 寺報

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