平成28年7月 海徳寺 寺報

水のような信心

或いは火のごとく信じる人もあり。或いは水の如く信じる人もあり。聴聞する時はもへたつ(燃立)ばかりをもへども、とをざかりぬればすつる心あり。水のごとくとも申すはいつもたいせず信ずるなり。日蓮聖人御遺文『上野殿御返事』

(信心をすることについて)あるいは火のように信じる人もある。あるいは水のように信じる人もある。(火のようにというのは)説法を聞いた直後は火が燃えるような熱心さであるが、日がたつにつれ捨ててしまうようになる。(これに対し)水のように信じるというのはいつも退転することなく信じるということである。

日本語訳:大平宏龍著『心が温かくなる日蓮の言葉』PHP新書

イチロー選手の最多安打

先日、メジャーリーグのイチロー選手が、日米通算で4257安打を放ち、これまでピート・ローズが持っていたメジャーリーグ歴代最多の4256安打を超えたというニュースが流れました。日本での記録をどのように評価するかで議論がなされておりましたが、いずれにせよこれだけのヒットを打つことは容易なことではありません。

イチロー選手の有名な話として、毎日必ず決まったルーティンを行うことが知られています。毎朝の食事はカレーであることに始まり、試合前に行う動作は、他の選手が時計代わりにしているというほど、毎日決まった時間に同じことを継続して行っています。

このエピソードを聞いていつも思うことが、イチロー選手は修行僧のような生活をしているなということです。

毎年11月1日から2月10日迄、中山法華経寺で行われる100日間の荒行は、1日に7回、3時・6時・9時・12時・15時・18時・23時と水行を行います。その際には寸分違わず水行が開始され、少しでも時間がずれると厳しく叱られます。なぜ時間厳守を重視するかといえば、決まったことを欠かさずに行うことが修行であるからです。

荒行には行堂清規という規則が定められており、1日2回の粗食、2時間程度の睡眠ということが荒行の厳しさを端的表すものとしてよく取り上げられます。しかし、大変なことをすることが荒行ではなく、行堂清規に定められたことを粛々と規則正しく行うこと自体が荒行という修行の根幹となります。

日蓮聖人は、今月取り上げましたお言葉において、火のような一過性の信仰ではなく、いつも同じような信仰生活を送る「水のような信心」が大切であることをお説きになられております。毎日欠かさず仏壇に手を合わせる、線香を手向ける等は容易いことと思いがちです。しかし、それを毎日継続して行うことは、簡単そうに思えて実は難しいです。

イチロー選手の最多安打の報道を見て、改めて「水のような信心」の大切さを感じました。

平成28年7月 海徳寺 寺報

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