令和5年2月 海徳寺 寺報

浅きを去りて深きに就くは丈夫の心なり

自らの価値観を顧みよ

「丈夫」とは一般に強い、壊れにくいことをいいます。
 仏教では「正道をまい進し決して退転しない修行者」のことを指します。さらに仏さまを尊称して「調御丈夫」と表現することがあります。この語は仏さまが一切の丈夫を教え導く師であることを意味しています。
 師たる仏さまは弟子の丈夫たちにこのように説かれました。「世法の価値観に囚われてはならぬ。不変の真理を規範として歩め」と。

出典:日蓮宗ポータルサイト『今月の聖語』 2022年2月号

令和五年となってから早くも一ヶ月が経過いたしました。今年の正月には子どもたちの冬休みの宿題で書き初めの提出がありました。そこで、家族それぞれが今年の目標を書くことといたしました。、

私が書いた字が「我慢」という言葉です。海徳寺での正月祈祷会にて何を話そうかと思案している時に頭によぎった言葉が「我慢」でした。

コロナになって我慢の生活が続いてきたこともあります。しかし、実際にはうさぎ年を迎え、イソップ童話の「うさぎと亀の話」や、年末のワールドカップにて日本が強豪のドイツやスペインに勝利したこと等の話題から連想した言葉です。

実は以前の寺報でもこの「我慢」を取り上げたことがあります。日蓮宗のホームページ「じつは身近な仏教用語」では、「我慢」が次のように説明されています。

「煩悩の一つで、強い自我意識から生まれる慢心のことです。仏教では、自分を固定的な実体とみて、それに執着することで起こる、自分を高く見て他を軽視する思い上がりの心を〈慢〉と呼び、このような心の状態を分析して、三慢、七慢、九慢と説きます。我慢はこの七慢の中の一つです。現在使われる、自分を抑制する、耐え忍ぶといった意味に使われるのは、我意を張る、強情の意味を介した転義で、近世後期からの用法です。」

亀がうさぎに、日本が強豪国に勝利したのも、相手の慢心が大きな勝利の要因ではありますが、「丈夫」な心があったことも忘れてはならないと思います。

コロナ禍も三年を迎え、現在の用法の「我慢」がもうしばらく続くものとは思います。決して「慢心」することなく「丈夫」な心を持ち続けたいと思い、今年の書き初めをいたしました。

海徳寺住職:加藤智章

令和5年2月 海徳寺 寺報

海徳寺寺報
報恩道語表紙(令和5年2月号)
海徳寺寺報
報恩道語表紙(令和5年2月号)