親の心子知らず
「老いて後思い知るこそ悲しけれこの世にあらぬ親の恵みに」
親御さんを亡くされた方、ぐっと来るものはありませんか? 親が健在な時は「頑固おやじ」「うるさいお袋」とつい愚痴っていませんでしたか? それが自分も年を重ねて来ると、厄介と思っていたその親から受けた愛情、存在の重さに気づいて来るのではないでしょうか。
お釈迦さま、日蓮聖人ですら「未だ父母への孝養足らず」と懺悔しておられます。ましていわんや私たちにおいては。このお言葉をよくよく肝に銘ずべし。
出典:日蓮宗ポータルサイト『今月の聖語』 2022年6月号
つい先日までTBS系列で放送されていた「不適切にもほどがある!」というドラマをご覧になった方はおられますでしょうか。主演は阿部サダヲさん。阿部さんは私の小学校・中学校の先輩となります。
このドラマで阿部さんは、中学校の体育教師で野球部顧問。設定として、昭和から令和の時代へとタイムスリップことにより、何かとコンプライアンスが叫ばれる令和の時代と、そうではなかった昭和の時代との相違が見事に描かれています。初回の放送を見て、次のような場面が印象に残りました。
まずは、煙草に関する場面です。昭和から令和にタイムスリップしたことに気がつかないまま、阿部さんは公営バスの後部座席で煙草を一服します。今では分煙が徹底され、受動喫煙という問題が広く知られていますが、昭和の時代では公共のバスの車内であっても喫煙が可能であったようです。
次いで、野球部の練習の場面です。昭和の時代では、何か失敗すると連帯責任でウサギ跳びやケツバットなどを強いることがありました。今では体罰は大問題です。また、昭和では練習中には水を飲むことが禁止され、自分もその記憶があります。しかし、現在では熱中症を予防する為にもこまめな水分補給が推奨され、水分補給に関する考えは全く異なります。
そして、昭和と令和との時代のギャップを面白おかしく描いているこのドラマを通じて考えたことが、世の中は色々と大きく変化しているということです。日々何気なく生活しているとその変化には気づきにくいですが、自分が気がつかないうちに世の中は変化している。まさにお釈迦様の教えの「諸行無常」です。
ただ色々なものが変化したとしても、親に対する感謝の気持ちはいつまでも変わらずに持ち続けていきたいなとも強く思いました。少し前に子供が高校受験を無事終え、自身の受験時にも両親が同じような思いをしていたのだろうということに気がつきました。家族葬や墓じまい等、何かと仏事を簡略化するこの令和の時代だからこそ、両親や先祖に対する感謝の気持ちは変わらずに持ち続けていきたいものです。
海徳寺住職:加藤智章