令和4年9月 海徳寺 寺報

陰徳陽報

「受けた恩は岩に刻め。貸した恩は水に流せ」と古人の言葉にあります。これは私たちの思いがこの反対になりがちだからこその戒めなのでしょうか。

見返りを考えず行った親切でもお礼を言われなかったり、通じていなかった時に不満を覚えることはないでしょうか。

そんな時ちょっと振り返って下さい。あなただって誰かの親切に気付いていないことがあるかも知れませんよ。思い当たったらこの言葉を口ずさんで下さい。

「誰かがあなたの力になっている。あなたも誰かの力になっている。誰かが誰かの力になっている」

出典:日蓮宗新聞社発行『今月の聖語』

先日、スポーツジャーナリストの増田明美さんの講演を拝聴いたしました。
マラソン中継の細かすぎる小ネタが面白いと有名です。上品で優しい声と親しみのある口調であっという間に時間が過ぎてしまいました。中でもトップアスリートならではの栄光と挫折、そこから抜け出したお話は仏教にも通じるお話でした。

自分が人生のどん底にいても声をかけてくれる人、手を差し伸べてくれる人がいる。たくさんの人々に支えられていると感じた時に感謝の気持ちがあふれ出たそうです。また、誰かが過酷な状況にあったとしても今度は逆に自分自身が手を差し伸べられるような人になりたいと思ったそうです。

私たちは目に見える縁と目には見えづらい縁をいただき生きています。知らず知らずに誰かの支えや助けを得ながら生きているのです。

じっくり考えてみましょう。きっと今までたくさんの方の支えと助けがありました。まずはそのことに気づくことが大切です。そして今度は自分がしてもらったことを、同じように苦しんでいる方にしてあげましょう。その私たちの助け合う姿こそが仏国土であり、それこそが大聖人の仰った知恩報恩であります。

色々なことがあるのが人生です。ですが私たちは1人ではありません。きっとあなたにも支えとなってくれている方がいます。そして心の中にはいつでも仏様がいらっしゃいます。そう思うと自然と手を合わせてしまいます。本当にありがたいことです。

(海徳寺山務員・山田甲希)

令和4年9月 海徳寺 寺報